「コンビニ百里の道をゆく」は、51歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。
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生まれ育った大阪府北摂地域にローソン1号店があったこともあり、幼いころから私にとってコンビニといえばローソン。特に「からあげクン」は学生の頃から食べているので、とても思い入れがあります。
からあげクンは今年で発売から34年目、累計販売数は34億食を突破する、大ロングセラー商品です。からあげクンを食べた少年少女が子育て世代となり、世代を超えて食べて頂いているという声も聞こえてきます。実際、メイン購買者は30、40代女性で、お子様向けに購入される方が多いと分析しています。
今や幅広い世代の方にご支持頂いていますが、今回、国際宇宙ステーションで野口聡一宇宙飛行士に、「宇宙日本食」として、スペースからあげクンを実食していただくことになりました。野口宇宙飛行士は米宇宙企業スペースX開発のクルードラゴンに搭乗される予定です。ついに、からあげクンが地球を飛び出し、宇宙進出を果たします。感慨深いです。
宇宙でも日本の味を楽しんでいただきたいと、フリーズドライにして、味をぎゅっと詰め込みました。原料はもちろん国産鶏肉です。ビールに合いそうな味と言えば、イメージしていただけるかもしれません。
食べた時に、スペースからあげクンの細かい粒子が機械の隙間に入り込むと危険なので、通常の半分程度のサイズにしました。密閉したパッケージを何度も作り直すなど試行錯誤。2017年2月に社内に宇宙プロジェクトが発足してから約3年半、ようやく実現にこぎ着けました。
いつか宇宙人にからあげクンを食べてもらえるかもしれない、なんてSFチックなことに想像を膨らませながら、これからも美味しさとワクワクを詰め込んだ商品開発をしたいと考えています。
竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
※AERA 2020年10月19日号