自公政権による税制改正論議が本格化している。相続税の改正では、富裕層への課税強化という民主党政権の方針を引き継ぎつつ、祖父母が孫に教育資金を一括して贈与すれば、非課税になるという新たな仕組みを打ち出した。制度は時限措置で、非課税になるのは孫1人あたり1500万円までなどとなっている。

 改正の狙いはどこにあるのか。第一生命経済研究所主席エコノミストの永濱利廣さんは、「景気への刺激策だ」として、次のように指摘する。

「現在、1500兆円ある家計の金融資産のうち、60歳以上が8割程度を持っていると言われています。しかし長生きのリスクなどもあって、なかなかそのお金が動きません。今回の改正は、その資金を若い層に移し、経済を活性化させる意図があります。『孫』や『教育』という言葉は受けもいいですから、財布のひもも緩みやすいでしょう」

 マーケットも色めき立った。この案が最初に新聞で報じられた1月9日の東京株式市場では、学習塾関連銘柄がそろって急騰。東京個別指導学院などが前日比3割前後の上昇を見せた。

 全国私塾情報センターを運営する「私塾界」の山田未知之(みちゆき)社長によれば、通常、高校3年生が塾に通う場合、年間約100万円の費用がかかるという。

「都市部の富裕層を中心に今後、改正された制度を利用して、塾にかけるお金を増やす動きが出てくるかもしれません。具体的には、集団指導だったのを個別指導にしたり、低学年から通わせたり、科目ごとに塾を変える『オーダーメード型』を取り入れたりすることが考えられます」

週刊朝日 2013年2月1日号