コロナ禍での特別なシーズンになったプロ野球。西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、タイトル争いについて言及する。
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プロ野球はシーズンも佳境に入り、優勝争い(セ・リーグは巨人の独走Vだろうが……)とは別の興味としてタイトル争いがあると思う。新型コロナウイルスの感染に揺れたシーズン。最初は投手にとっては難しい年かなとも考えたが、超一流のハイレベルな投球を見せてくれている投手がいる。
セ・リーグの巨人・菅野智之と中日・大野雄大は文句なしである。菅野は開幕からの連勝記録が13でストップしたとはいえ、優勝への貢献度は計り知れない。味方の得点よりも失点を1点でも少なく。そのためには試合の大局観というか、勝負所、潮目を見抜く力が不可欠である。そして、大野雄大は10月14日の阪神戦で完封勝利を収めて5完封か。これは投手最高の名誉である沢村賞の選考も難しくなるであろう。
私が最近、目を見張ったのは、セ・リーグの新人王を争う広島・森下暢仁の投球である。体にとにかく柔らかさを感じる。股関節の使い方からひじ、肩が回るまで、これだけスムーズに動く選手はそうはいない。そして柔らかいだけではない。150キロに達する直球は空振りがとれる。何より投球フォームがブレないから内外角にしっかり投げ分けられている。
森下は力強さも出てきている。大学ナンバー1投手の触れ込みで明大からドラフト1位で入ったが、1軍の、しかも主力と対戦していく中でしか、本当の強さは身につかない。巨人の戸郷翔征も独特なフォームから威力ある直球を投げ込むが、まだ完成されたものではない。新人王争いという点でも森下が上を行くと見ている。
打撃部門では、セは本塁打王争い、パは首位打者争いが面白い。セの本塁打王は巨人の岡本和真と阪神の大山悠輔が争っているが、足踏みするようだと、3位以下の選手が一気に抜き去る可能性もある。30本に届くかどうか。