消費税率アップ、インフレ懸念、住宅ローン減税……。低所得者層にも「いまこそ持ち家」の条件が整い、住宅ローン破綻が一気に増大する危険性が高まっている。「日本版サブプライムローン危機」とも呼べる深刻な状況だ。

 危機の条件はほかにもある。その一つが、「円滑化法切れ」だ。2009年に施行された時限立法の中小企業金融円滑化法が、今年3月末に期限を迎える。円滑化法では、返済が滞りがちな低所得の住宅ローン利用者などが厳しい取り立てに遭わないよう、資産査定が緩やかにされていた。

 だが4月以降は、金融機関が通常の融資基準に基づいて督促し、マイホームを失う人が増える恐れがある。不動産競売流通協会の関係者は、

「法の施行後の10年以降は、ローン返済できずに競売になる戸建てやマンション件数が減っています」

 というから、反動が起きる可能性は決して小さくないだろう。

 過去の住宅ローン市場にも、似た状況があった。不況が深刻だった90年代、公共投資だけでは景気を浮揚できなかった政府が、旧住宅金融公庫に導入させた「ゆとり返済」の制度だ。

 これは、当時主力だった25年ローンに、最初の5年間だけ利払いを減らした返済額を設定し、「生活にゆとりができる」という触れ込みで利用者を増やした。ところが、借り手の賃金収入が年齢とともに上昇することを前提にして、6年目からは返済額が増える設定だったため、その後の不況によって計画が狂い、ローンを払えずお手上げとなった人が続出。競売件数が増えた。

 これが社会的な批判を浴びて、00年以降の公庫廃止論や融資縮小の背景にもなった。だが今や政府は、住宅取得層の所得低迷に伴い、35年の超長期ローンの普及を推進している。公庫はその後、住宅金融支援機構と名前を変えて、35年ローンの「フラット35」を売り出し、頭金の少ない層にも貸し出しているのが現状だ。

AERA 2013年2月11日号