11月6日から3日間、オンラインで「ワールド マーケティング サミット オンライン」が開催された。注目は、“現代マーケティングの父”であり、『コトラーのマーケティング4.0』などの著書で知られるフィリップ・コトラー教授による講演だ。コロナ危機によってマーケティング理論に修正が必要になるのか。講演ではコロナ禍による社会や消費者心理の変化から、今後、企業が目指していくべき方向性についてまで語られた。

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■「ワールド マーケティング サミット」とは

「ワールド マーケティング サミット(WMS)」とは、世界のマーケティング・リーダーたちによる合同講演会だ。母体はフィリップ・コトラー教授によって、2010年に設立された。2014年から2016年までは日本で開催されたが、次第に世界の主要都市に広がり、2019年には東京を含む全世界15都市で実施されている。「マーケティングを通してこれからのより良い世界を創造する」というビジョンを共有し、マーケティングのアイデアやツールを探究するだけでなく、社会経済問題についてのソリューションを見出そうとする活動である。

 2020年はコロナ禍により、オンラインで世界の有識者とマーケターが集う「ワールド マーケティング サミット オンライン(eWMS)」と形を変え、11月6日から3日間にわたって開催された。世界104カ国に配信され、視聴者は100万人以上にもなるという。

 主宰のコトラー教授は、eWMS開催の意義についてこう語っている。「新型コロナウィルスの世界的な大流行は、すべての業界と企業に困難で不確実な時代をもたらしました。そのような中でも、マーケターは常にポジティブであり続けなければなりません」

 コロナ以後、「最良のビジネス機会を求め、常に市場を開拓し企業と社会の発展につなげていく姿勢」がマーケターには重要であると強調した。

■新型コロナの経済への影響

 コトラー教授の講演で掲げられた論点は、「国家、企業、顧客はコロナ禍にどう対応したか」「コロナ禍から経済が回復するまでに要する期間は」「資本主義とマーケティングはコロナ禍によってどのような影響を受けるか」の3点である。

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国家、企業、顧客はコロナ禍にどう対応したか?