「このカードを使って子どもたちが妻に感謝の気持ちを伝えられるようになれば、妻の心労も少しは軽くなるのではないか」。そう思って購入し、さっそく自宅に送ったという。

 長男は嫌がるかと思い、最初は次男・三男とゲームを始めようとしたが、その様子を見ていた長男は「僕もやってみたい」と自らゲームに参加。照れくさくて普段は言わないワードや、5歳の三男には難しいワードもあったが、毎日家族で笑いながら伝え合っているうちに、日頃の会話や笑顔が増えたという。また、書かれたワードを使うために、子どもなりに自分から会話をつくっていこうとする様子も見られ、成長を感じることもあった。

 驚いたのは、ある夜、長男が寝る前に「今日はママにあんなこと言ってごめんね」と謝ってきたことだ。「カードを使うようになって気持ちを素直に表せるようになったのかもしれません」とAさん。「親も子どもたちのいいところを探すようになりましたし、親子のコミュニケーションがこれまで以上に増えました」と振り返る。

 このカードを製作した結婚社会学アカデミーは、幸せな結婚生活を続けられる人を増やすことをめざし、出会いや結婚生活をサポートする「結婚アテンダント」の養成などをおこなっている。同アカデミー理事長で結婚相談所「ノッツェ.」社長の須野田珠美さんは、「新型コロナの影響から自宅で一緒に過ごす時間が長くなりすぎた結果、お互いの存在がうっとうしくなったり、価値観の違いが浮き彫りになったりして、夫婦関係が悪化している人が増えています。ゲーム感覚でポジティブな言葉をかけ合えれば関係修復につながるのではないかと考え、このカードを発案しました」と話す。

 東京都内の男性会社員Bさん(57)は、結婚して30年近くになる妻(49)と、社会人と高校生の子どもとの4人暮らし。新型コロナ流行前は仕事が終わるとほぼ毎晩飲んで深夜に帰宅する生活を送っていた。そのため平日は妻や子どもたちと顔を合わせる時間は少なく、この20年近く妻との会話もほとんどなかった。それが、コロナで生活は一変。在宅勤務が増えて飲みに行く機会は激減し、妻と毎日顔を合わせるようになった。ところが、急に一緒にいる時間が増えても何を話していいかわからず、相変わらず会話のない日々だったという。そんなとき、職場の部下にこのカードを薦められた。

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20年会話のなかった夫婦は変わるのか?