もう一つの特徴が35の多言語対応だ。記者も試しに訳語を英語に設定し「これから会議を始めます。今日のテーマは議事録です」と話してみると、日本語の文字起こしの横に「Let’s start the meeting. Today’s theme is about the minutes.」という訳が瞬時に現れた。「グローバル企業でも活用されている」(同)といい、価格は個人向けが月1500円、法人向けが2万9800円とリーズナブルだ。
■働き方を変える効果
法人に特化したサービスも見てみよう。1997年の創業で、日本における音声認識の草分けであるアドバンスト・メディアは、独自開発の音声認識エンジンを持つ。歴史があるためAIに学習させるデータを豊富に蓄積しており、認識精度が高い。コールセンターや医療現場のほか、膨大な議事録を作る自治体で高いシェアを誇る。「クライアントごとにAIの学習データをカスタマイズするため、方言にも対応できる」(同社VoXT事業部・志村亮一部長)という。
導入している茨城県取手市議会事務局の岩崎弘宜(いわさき ひろまさ)さんは「答弁など用意された文章を読む場合の認識率は100%に近い。リアルタイムで起こせるので、言い間違いなどがあってもすぐに確認して、発言の訂正を促せる」と満足げだ。
同社は6月から、リアルタイムのオンライン会議に対応できるAmiVoice ScribeAssist(アミボイススクライブアシスト)の販売を開始。こちらはクラウドを介さずに端末上で文字に変換するため、セキュリティー上の懸念が少ないのが特徴だという。
最後は、18年のサービス開始以来、上場企業を中心に約千社が導入しているスマート書記。こちらも「上場企業が要求する高いセキュリティー水準をクリアしている」(スマート書記を提供するエピックベースの西澤宗・取締役)と自信を見せる。約90の多言語に対応しており、同じ英語でも米国、英国、インド、ケニアなど12カ国の訛りを認識できるという。
記者が感じたのは、文字起こし後の編集のしやすさだ。スマート書記の画面上で行の削除や結合をしたり、ポイントとなる発言にマーカーをつけ、そこだけ出力するなどが簡単にできる。
複業研究家で、働き方のコンサルティングも手がける西村創一朗さんは言う。
「文字起こしをAIに任せることで、人間はよりクリエイティブな仕事、好きなこと、得意なことに時間を割けるようになるはずです。働き方にもたらす影響は大きい」
「議事録作成は新人の仕事」なんて言ってる会社は時代遅れになる。(編集部・石臥薫子)
※AERA 2020年11月30日号より抜粋