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2020年に75歳を迎えた落合恵子さん。作家であり、子どもの本の専門店「クレヨンハウス」の主宰者でもある彼女の日常は、本を愛し、植物を愛し、時々デモに足を運ぶ。コロナで世界が一変し、当たり前だと思っていた日々が、実はとんでもなくありがたいことだったのだと気づいたとき、「この先の人生、いかに生きるか」? 新著『明るい覚悟 こんな時代に』で、落合さんが自分自身と私たちに投げかけた大きな問いだ。タイトルに込められた深い思い、そして落合さんなりの覚悟とは。お話をうかがった。
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■多くは要らない。丁寧に生きるためにむしろ少しがいい
同書は2018年1月から月刊誌(朝日新聞出版 『一冊の本』)に連載したものをまとめたもの。『明るい覚悟 こんな時代に』というタイトルに込められた思いとは、どのようなものだったのか。
「連載開始当時は、母を見送ってちょうど10年が過ぎたころ。大切な友人を病気で失ったり、自分自身の老いを実感したり。頭でわかっていたはずでも、改めて『命って有限なんだ』っていうことを痛感しました。死は、案外身近なところにある。相変わらず社会は不透明だけど、限られた日々を、私はどう生きようか。自分自身との約束という意味で『覚悟』っていう言葉になりました」
「覚悟」には人を追い詰めるニュアンスもある。そこで「明るい」と添えることで、より柔らかく、僅かなものを握りしめて、自分が望む自分になっていく、落合さんの意志が込められた。
「連載の終わりごろにコロナの感染拡大が始まって、『明るい覚悟』だけでは足りないな、と。それで『こんな時代』っていうサブタイトルをつけました。その『こんな』には怒りも込められています。だって社会はまずます不平等で不安定でしょう?」
落合さんには、9年前の3.11(東日本大震災)以降、政治や社会に対して拭いきれない違和感があるという。
「もう原発に頼らなくてもいいはずなのに、この国はまだそれらを動かし続けている。力さえあれば何でもできるっていう価値観は、昔からどうしても承服できないんです。昨今の新型コロナ感染拡大もその延長にあるように思えてならない。トランプ大統領は感染してもすぐに万全の治療が受けられたでしょ? 本来は誰もが等しく、手厚い治療を受けられなきゃおかしいと思う。当たり前の日常がどんなにありがたいものか、私たちは9年前に思い知ったはずなのに、と思うと歯がゆいですね」