秋田県でのサンカク「ふるさと副業セミナー」(リクルート提供)
秋田県でのサンカク「ふるさと副業セミナー」(リクルート提供)

 人材の獲得が難しい地方の中小企業を、都会の働き手が手伝うケースが増えている。リモートワークも活用した「ふるさと副業」と呼ばれ、両者を仲介し、人材を紹介する取り組みが進んでいる。

【写真】植物工場のビニールハウスで栽培されたトマトはこちら

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 関西在住の30代の男性会社員Aさんは、空き時間を活用し、数件ほどの副業をこなす。仕事先は東京、新潟、和歌山などさまざま。

 Aさんの副業先の一つに大阪の金属加工会社がある。自動車部品や刃金などをつくり、納入先は企業だが、消費者向けの商品ができないか、副業できる助っ人を探していた。Aさんはメーカーの営業や店舗販売戦略の経験があり、仕事を紹介された。「マーケティング的な視点と技術的な視点を合わせる仕事」(Aさん)と説明する。

 Aさんはコロナ禍で勤め先の業績が打撃を受けたことをきっかけに副業をはじめた。勤め先がテレワークを容認し、往復3時間の通勤がなくなった。平日の就業後か、土日を活用している。自分で時間をうまくコントロールできて、「収入が増やせたのは大きい」と言う。また、「自分の経験のど真ん中でなくても登用してくれて、少しずつ仕事の幅が広がっている。副業はいいことしかない」と言う。

 一方、Aさんは独立や起業を考えていない。「安定を捨てる気はない」との考えで、本業に従事して副業を続けるという。

 都会の人材を募集する地方の中小企業は、どんなところか。青森県八戸市の環境緑花工業は1982年に造園業で創業、土木系の公共工事も請け負う。造園や土木工事で出た廃材をボイラー燃料として植物工場も展開し、ビニールハウスでトマトなどを栽培する。

 創業者は3年ほど前に他界し、息子の山谷幹樹社長が引き継いだ。東京で自然環境コンサルタントとして働いていたが、造園や土木工事の経験がなく、会社経営も「何をしていいのかわからなかった」と言う。

 山谷さんは県の専門家派遣事業でコンサルタントを紹介してもらった。派遣されたコンサルタントは山谷さんに副業を募集してみないかと持ちかけた。同社は、植物工場の農作物をいかに高く販売するかが課題だった。

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