セ・リーグ連覇を飾ったにもかかわらず、巨人・原辰徳監督に強い逆風が吹いている。日本シリーズでソフトバンクに2年連続の4連敗。投打で圧倒され、シリーズ史上初の屈辱を味わった。
3度にわたって監督に就任し、在任14年間で9度のリーグ優勝、3度の日本一。今季は川上哲治元監督を抜いて球団史上歴代最多の1091勝の金字塔を打ち立てた。
だが、本当の意味で「川上超え」を果たしたかと言うと疑問を呈する意見が多い。巨人ファン歴60年という内藤洋一さんは語気を強める。
「時代が違うと言われればそれまでだが、川上監督のV9時代は阪急や南海を破って9年連続日本一に輝いている。ソフトバンクに完膚なきまでに叩(たた)きのめされた原監督はそれに比べればまだまだ」
来年は2012~14年以来のリーグ3連覇ではファンも満足できない。9年ぶりの日本一になることで、指揮官は「名将」として誰もから認められるだろう。
ただ、今季14勝で最多勝に輝いた菅野智之がポスティング制度によるメジャー挑戦の意向を表明。チームを長年支えてきたエースが抜けるとなれば、その痛手は計り知れない。
また、DeNAからフリーエージェント(FA)宣言した梶谷隆幸と井納翔一を獲得したが、この補強にも懐疑的な見方が少なくない。ある球団首脳はこう話す。
「梶谷が近年で活躍したのは今年だけ。昨年、一昨年は度重なる故障や若手の台頭でファーム暮らしが続いていた。全盛期より脚力は落ちているし、陽岱綱のようにレギュラーさえつかめない可能性もある。井納も球が速くて変化球もいいので見栄えはいいが、突如乱れることが少なくない。嫌なイメージはないです」
梶谷、井納が加わることで、押し出される選手が出てくる。梶谷は中堅、右翼が本職だが、中堅は丸佳浩、右翼は今季頭角を現した松原聖弥がいる。投手も井納が先発の1枠に入ることで、若手投手たちのチャンスは少なくなる。主力に生え抜きがズラリと並ぶソフトバンクは梶谷、井納に見向きもしていない。巨人は「球界の盟主」の座を奪い返せるだろうか。
(牧忠則)
※週刊朝日オンライン限定記事