次世代を担う農業者となることを志向する49歳以下の人を対象とした交付金で、就農前の「準備型」と、就農後の「経営開始型」の2種類がある。準備型は最長2年、経営開始型は最長5年間、年間150万円の給付が受けられる。すでに半農半蔵人として農業経験を積んだ沼田さんは経営開始型を受給した。受給には、5年目までに農業で生計が成り立つ実現可能な計画を立て、市町村から認定を受けるなどの交付条件がいくつかある。
「半農半蔵人として月額12万円助成を受け、家賃7200円の町営住宅に住み、就農に向けた経験を積み重ねることができたことで、人材資金の対象となり、今では自営就農で独立できるまでになりました」(沼田さん)
■「地方で起業」志した夫妻 農地継承+民宿などで自立
農業の担い手確保に対する支援には都道府県差はあるが、人材資金は国の制度だ。農業未経験から人材資金を活用しながら、半農半Xでの自立にたどり着いた夫婦を訪ねた。
徳島県勝浦町のみかん農家、石川翔さん(32)、美緒さん(33)夫妻は、東京からの移住者だ。ともに会社員として働いていたが、いつかは独立して、夫婦一緒に働きたいと考えていた。翔さんはこう振り返る。
「東京での起業は家賃などの固定費も高く、常に流行り廃りに左右されてしまいます。視野を広げ、地方での起業を考えました」
移住先は寒さが苦手だったことから、温暖な地域を候補とした。とはいえ移住先でどう生計をたてるのか、具体的なイメージはない。半年程度、働かずとも暮らしていけるだけの蓄えはあったが、起業のための十分な資金はない。
そんななか、15年8月に四国の移住相談イベントに参加し、勝浦町の移住相談員と出会った。そこで提案されたのが、高齢で事業が継続できないみかん農家の後継者探しだった。
「正直、農業はまったく考えていませんでしたが、すでに収穫できる畑を引き継ぎ、販路もある。最初から夫婦で収入を得ていけることに魅力を感じました」(翔さん)