作家の室井佑月氏は、「Go To トラベル」の一時停止を決めた菅政権について、利権中心だと批判する。
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12月14日の『時事ドットコム』によると、「菅義偉首相は14日夜、首相官邸で開いた新型コロナウイルス感染症対策本部の会合で、観光支援事業『Go To トラベル』について、28日から来月11日までの間『全国一斉に一時停止する』と表明した。経済を重視する首相の肝煎り政策だったが、感染再拡大に歯止めがかからないことから方針転換を余儀なくされた。トラベルを推進する菅政権に批判が高まっていたことも判断に影響したとみられる」
つまりさ、内閣支持率が下がったから、渋々そうしたわけね。科学的知見から考慮し、というわけでなくて。ダメだ、こりゃ……と思っていたら、おなじく14日の夕方、毎日新聞にこんなことが書かれていた。
「だが、自民党の二階俊博幹事長は全国旅行業協会の会長も務めるGo To推進論者だ。(中略)二階派幹部は突然の一時停止表明に『どういう趣旨なのか。勝手なことをしやがって』と不満を漏らした」
そして政府はどうしたか?
15日の共同通信によると、「赤羽一嘉国土交通相は15日の記者会見で、Go To トラベルの全国一時停止に伴い、キャンセルを受けた事業者に旅行代金の50%を補償すると表明した」。
菅政権を延命させるため、二階さんの顔を立てなきゃ、だものね。二階さんの息のかかったところに、安定して税金を落とさなきゃね。それがまわりまわって、二階さんや菅さんの献金やらパーティー券購入につながり、彼らの懐がうるおう寸法だ。そして、金まわりが良いと、それに群がる忖度集団が現れる。
目先の金が正義という有象無象。
もう、ここまで書いてわかったと思うが、この人たちを有り難がる必要なんてない。
新型コロナさえ、この人たちにとっては自分が肥えるためのチャンスなのだ。ただそれだけ。
あたしたちの命や健康なんてどうでもよく、自分たちの利権中心に物事を考える。今使えそうな税金を動かして。
たしかに、利権中心に物事を考えるなら、科学的知見などというものは邪魔なだけだ。
この人たちは、日本の将来のことも考えていない。それを考えているなら、あたしたちの命や健康をここまで軽く扱ったりしない。
この国が破綻(はたん)してしまう前、あたしたちにまだ騙されている余力があって自分の力があるうちに、税金でもっと肥えたいだけじゃない?
いいや、あたしたちは騙(だま)されている余力など、もうとっくにないのかもしれない。
だから今、どんなに酷(ひど)いことがおこっていても、力の強い人にひたすら従う人が多くなった。
室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中
※週刊朝日 2021年1月1‐8日合併号