私も田中選手が「ちゃんと数値にも表れている」と熱弁しているVTRを見たことがあった。テレビ朝日の情報番組だったと記憶するが、彼のドイツの住まいを記者が直撃し、シンプルなインテリアや生活雑貨をリポートした際、「これは?」と訊ねたのが南部鉄瓶。すると田中選手は、待ってましたと言わんばかりに説明し始めたのである。
鉄分は、体内で赤血球の一部として血液中の酸素を運搬する重要な働きを担っている。人間の体内では合成することができないため、食べ物から摂取するしかないのだ。その鉄分が不足するとどうなるのか調べてみたら、息切れ、だるさや眠気、疲れやすさに繋がり、下肢静止不能症候群というワードまで出てきた。田中選手には当然こうした知識があり、そこで選んだのが、南部鉄瓶で沸かした白湯の摂取だった。
田中選手の活躍に加え、サッカーファンならずとも真似したくなる南部鉄瓶による鉄分摂取。すぐにネットやSNSで広まり、主産地の岩手県奥州市は、いまも「碧効果」に沸く。
田中選手愛用のモノは、『及春鋳造所(おいはるちゅうぞうしょ)』の南部鉄瓶。ふるさと納税の返礼品としても人気で、同市の『佐秋(さあき)鋳造所』製のサッカーボール型の南部鉄瓶も話題になっている。
サッカー日本代表・田中碧選手は“奥州の歓喜”にも一役買っている。
山田美保子(やまだ・みほこ)/1957年生まれ。放送作家。コラムニスト。「踊る!さんま御殿!!」などテレビ番組の構成や雑誌の連載多数。TBS系「サンデー・ジャポン」などのコメンテーターやマーケティングアドバイザーも務める
※週刊朝日 2023年2月10日号