この2つのタイミングのせいで、電話が嫌いという人は少なくないでしょう。ちなみに、電話が苦手な人は雑談が苦手な傾向があります。メールであれば、他愛もない話題をすることなく用件だけに絞ればいいので、余計電話への苦手意識が増すのでしょう。

 となると、リアルな人間関係にも支障が出がちです。先日、取材した食品メーカーの管理職がぼやいていました。

「最近の若手社員は人間味がない。来社した顧客に対して笑顔がない。さすがによくないと思ってやんわりと注意したら、聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で『面白くもないのに笑えません』と言い返してきました」とのこと。

 ちなみに、この若手社員は電話が苦手で、会社に電話がかかってきても取らないそうです。昔なら上司が厳しく指導する場面になるはずですが、「パワハラ上司になりたくないので何も言えません。おそらくこのまま、電話ぎらいは解消しないことでしょう」とぼやいていました。

 こうした若手社員のような人は、電話に出ないことで上司の心証が悪くなるだけでなく、相手に誠意を伝えることができず、信頼関係の構築が上手にできない状態に陥ります。当然コミュニケーションの齟齬が生まれて、成果も出づらくなります。そのくらい、電話が苦手は放置してはいけないテーマなのです。

 では、苦手な人にはどのようなアドバイスが有効なのでしょうか。

 20代でメーカーに勤務しているDさんは、電話が大の苦手でした。かかってきても取らない。仕事で使わざる得ないときには緊張しすぎて「何をいっているのかわからない」と切られてしまった経験があるくらいでした。そうした経験が苦手意識を増幅させて、恐怖症にまでなっていたときがあったとのこと。

 ただ、職場の上司から「電話の苦手意識を克服できるように支援するから、頑張ってみてほしい」と言われ、以下のことを取り組んだようです。

 それは大きく2つ。1つは「いつもお世話になっております」など電話でよく使う言葉を30個書いて、その言葉を事前に口にする練習をする。もう1つは、電話の際は必ず相手の話を整理するためのメモを手元に準備する。

 この2つを行ったところ、苦手意識が徐々に薄れて、1年後には克服ができたようです。練習を繰り返したことで、流暢に話せるようになり自信も生まれただけでなく、メモという外部記録装置を用意することで、緊張や混乱が和らいだのだと思われます。

 このように、ちょっとした工夫で電話ぎらいは克服できます。3か月くらいは練習とメモの用意は続けてみてください。きっと、苦手が克服できるはずです。

西野一輝(にしの・かずき)/経営・組織戦略コンサルタント。大学卒業後、大手出版社に入社。ビジネス関連の編集・企画に関わる。現在は独立して事務所を設立。経営者、専門家など2000名以上に取材を行ってきた経験を生かして、人材育成や組織開発の支援を行っている。

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