国軍による事実上のクーデターが起きたミャンマー。ネットや電話回線がつながりにくくなるなど、国民の間に不安が広がっている。アウン・サン・スー・チー氏率いる最大与党・国民民主連盟(NLD)関係者らの拘束は数十人に上るという情報もあり、軍事政権の長期化を懸念する声が上がっている。
1日の夕方(日本時間19~20時ごろ)、日本にいる仲介者を通して、ヤンゴン市内在住のミャンマー人男性(43)から現地の様子の知ることができた。身の安全を確保するために名前は明かせないというが、二人の子どもの父親であり、ビジネスマンで、人権団体にも所属しているという。
ミャンマー国軍は1日午前8時半ごろ、テレビを通じて「国家の権力を掌握した」と宣言。全土に1年間の非常事態宣言を発令した。
「国の報道で明確に、国軍は1年間国家の権力を掌握するという報道があったことから、これは確かにクーデターだろうと思いました」(男性)
男性によると、1日の午前中はまだ人の動きがあったが、午後になるとヤンゴンの街はかなり静かになったという。外出制限はかかっていなかったが、外を歩く人の姿はほとんど見られなかった。巡回バスは普段通りに道路を走っていたが、個人の乗用車は少なく、その代わりに軍事政権時代と同じく、市内には軍の巡回車両が出てきていたという。
午後にインターネットが遮断されるという情報が流れ、実際に男性と連絡を取ろうとすると、電話回線やネットがつながったり、きれたりと不安定な状態だった。ヤンゴン市内の一部の銀行のATMの前には一時遮断のお知らせが掲げられ、人びとは急いで現金を引き出すなどしていたという。
「今のところ生活には困っていないものの、非常事態宣言が発令されたため、必要な日用品等を早めに買込んで、家へ戻っている人が多い。今後の生活に不安感が広がっている」(同)
現地の事情に詳しい日本人によると、これまでも少数民族などで政府批判の動きが見られた場合、ネット遮断の措置がとられることはたびたびあったという。市民はネット遮断などにはある程度慣れてはいるが、今回の場合は軍政が長引くとみられることから、影響が広範囲に及ぶことが懸念されている。
「今後どのような展開になるかは、誰も想像がつかない。これから海外とのビジネス取引や、貿易、物資運送業に支障が出てくるだろう。結果、市民の生活にも影響があることに間違いないと思う」(同)
今回、非常事態宣言に先立ち、スー・チー氏とウィン・ミン大統領らNLD幹部数人の拘束が日本で報じられてる。しかし、男性が所属する団体の情報によると、そのほかにも、軍は中央政府だけでなく地方域・州の政権執行委員の幹部や、NLD関係者を自宅から連行して拘束している可能性が高いという。