「きっかけと『自分はできる』という気持ちさえ持てれば、どんな人でも勉強するようになる。長男はその一つの成功例に過ぎないと思っています」
東大2次試験前日のことが忘れられない。親子3人で東京行きのバス乗り場に向かう途中、転がってきた空き缶を息子が拾ってゴミ箱に捨てた。親の姿を見てくれていたと思った。
「僕自身が親を信じられなかったのは、親の言葉よりもその姿でした。受験も一緒。受験生の子どもを持つ親には、『あなたを気にかけている』というメッセージを、言葉よりも態度で送ることをお勧めしたいです」
母親のほうが子どもとの距離が近い家庭は少なくないだろう。『決定版・受験は母親が9割 佐藤ママ流の新入試対策』(朝日新書)などの著書がある佐藤さんは、受験直前期についてこう話す。
「最も子どもの心を落ち着かせる方法は、結局のところ『勉強』以外にありません。2月以降は睡眠・食事・風呂の時間をきちんと確保し、それ以外はすべて勉強に充てられるように親はサポートしてほしい」
佐藤さんが特に心がけていたことが二つある。
一つ目は、子どもの性別・性格に合わせたサポートをすることだ。長男は冷静で堅実。親が放っておいても勉強するので、直前期も特別な声かけはしなかった。次男は明るく話し好きな一方で、おっちょこちょい。忘れ物をしないように気をつけた。三男はマイペース。勉強の計画を立てる際も本人の希望を大切にした。きょうだいの中で最も話し好きだったのが長女。細かな話し合いをしつつ、二人三脚で対策を考えた。
二つ目は、勉強の計画を具体的に立てることだ。直前期は子ども一人ひとりと相談し、朝7時起床、8時まで朝ご飯、10時半まで数学、11時まで採点、正午まで理科──といった具合に、佐藤さんが朝から晩まで24時間分の計画を立て、部屋に貼り出した。
「たとえ計画どおりにいかない日があったとしても、限られた時間のなかで何をするかを考えることが大切です」