将来的には「男性(あるいは元男性)のウグイス嬢」の誕生もあるでしょうが、いわゆる男女平等の理屈の下、いたずらに「男も採用しろ!」などと声を荒らげる者がいないのは、なぜならそこには男女の差異故の「おもむき」や「味わい」があるからです。しかし、そういった概念すらも「差別だ」「偏見だ」と捉えられてしまう昨今。現に私も常日頃「オカマがみんな語尾を伸ばして喋ると決めつけないで!」と世間のステレオタイプに腹を立てており、こんなことを言えた立場ではないかもしれませんが、今はただウグイス嬢たちの無事と安泰を祈るばかりです。何でもかんでも欧米由来の「同等主義」に落とし込むような勿体無い愚行にだけは巻き込まれませんように。
それよりも、世の中に溢れる「自動音声」における男女比率の偏りの方が、よっぽど気になります。カーナビも留守番電話も「お風呂が沸きました」も、女性の声である絶対的な必要性などないはずです。せめて初期設定段階で、どちらか選択できる余地があってもいいと思うのですが。ホモなのにまるで女と暮らしているみたいで、正直気持ちが萎えます。
※週刊朝日 2021年2月26日号
■ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する