現地での日々は実際に驚きとワクワクの連続だったという。

「ウランバートルまでは飛行機で数時間なのですが、そこから9時間くらい車でゲルまで移動するんです。だんだん景色が砂漠になってきて、ラクダもいるし馬も走っていて、感動しました。ただ食べ物が毎日羊肉(ラム)で、フライパンにラムの味がついちゃっているんです。パスタを作ってもラムパスタ、みたいになっちゃって、それはちょっと困ったけど(笑)、でも楽しかったです。人もみんな良い人ばかりだし、男性も女性も強くて生命力に溢れている。共演したアムラも、遊牧民の女性を演じたツェツゲ・ビャンバさんも国際的に活躍していて、英語もうまいんです。すごく刺激を受けました」

 モンゴルの地で自分を解放し、成長していくタケシがそのまま自分自身に重なった。

「旅には新しい考え方に触れたり、恐怖心を克服できる機会がつまっていますよね。新たな刺激を受けて、ちょっと豊かになることができる。向こうでは携帯の電波もつながらないし、日本のニュースもまったくわからない。最初は少しホームシックになりましたけど、だんだん切り離している状態が楽しくなってきた。普段、必要以上に情報過多になっているなと気づかされました。お金も物も情報も自分の身の程に合っていなかったりトゥーマッチになると、人間は行き詰まってしまう。それよりも人としっかりつながることや相手を思いやること、相手を信じることでもっと深いものが得られる。それは僕自身も昨年の1年でより感じたことでもあります」

(中村千晶)

柳楽優弥(やぎら・ゆうや)/1990年生まれ。東京都出身。2004年にスクリーンデビュー作「誰も知らない」でカンヌ国際映画祭史上最年少・日本人初の最優秀男優賞を受賞。主な出演作に映画「ディストラクション・ベイビーズ」(16年)、「銀魂」シリーズ(17、18年)、「夜明け」「泣くな赤鬼」(ともに19年)、ドラマ「ゆとりですがなにか」(16年)などがある。主演映画「HOKUSAI」「太陽の子」が21年公開予定。

>>【後編/柳楽優弥 「カンヌ最年少受賞」と「20代のバイト生活」】へ続く

週刊朝日  2021年3月5日号より抜粋

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