「ターコイズの空の下で」はモンゴル・フランス・日本の合作映画。柳楽優弥さん演じる資産家の御曹司タケシが突然モンゴルに放り込まれ、さまざまな出会いや体験をするロードムービーだ。柳楽さんは約3週間、モンゴルで撮影を行った。
「実際に突然『柳楽さん、数カ月後にモンゴルに行けますか?』みたいな感じで始まったんです。僕は海外を旅するのが好きだし、モンゴルは未体験。『ぜひ行ってみたい!』と引き受けました」
自堕落で享楽的な日々を送っていたタケシは、祖父の命令でモンゴルで人捜しをすることになる。ワイルドなモンゴル人のアムラ(アムラ・バルジンヤム)に連れられて広大な平原をゆくタケシは、初めて見る景色に興奮し、出会う人々に驚く。そのリアクションがナチュラルで、まるで映画自体がドキュメンタリーのように見える。海外育ちで4カ国語を操るKENTARO監督の演出は独特だった。
「セリフもあまりなく、現場でセリフを作ったりカメラをまわしながら『ちょっと歩いて』という感じ。そうした即興的な演技は是枝裕和監督の『誰も知らない』以来でしたけど、けっこう僕、そういうのが好きなんですよね」
KENTARO監督からは「いまの柳楽君が撮りたい」と言われたという。
「監督はこれまでに出会ったことのないほど陽気でクレバーでおもしろい方でした。『コマーシャルみたいな演技はやめてくれ!』ともよく言われました。とにかく自然に、ということだと思います。本当にいま一人で旅しに来ているんだよ、そういう気持ちになって、と。モンゴル滞在期間中、現場に向かう自身の姿勢そのものを演出されていた気がします。『鏡も見ないように』と言われました。見ているつもりはなかったけれど、気づかないうちに見ていたんでしょうかね。カッコ悪いですね(笑)」
自意識をできるだけもたないように、努めたという。
「『よく見せたい、いい演技をしなくては』という思いは、こういう作品には敵なんだと感じました。僕は舞台もやっていたし、どこか『演技で魅せる!』みたいなことに意識が向いてしまっていたのかもしれない。『どうやったらうまくなれるんだろう?』『もっとうまくなりたい』と思いながら、20代はもっと迷っていた、というか。自分の中の着地点は見えているんですが、なかなかすべてがうまく合致するわけじゃない。そんななかでKENTARO監督のグローバルな感覚や発想と、日本人としての思想みたいなものがうまくブレンドされたところに、本当に学ばせてもらいました。監督にあらためて自分のなかにあるベースのような場所に、戻してもらった気がしています」