
保守系論壇やネット言論から「偏っている」と批判される「琉球新報」「沖縄タイムス」の記者たちを徹底的に取材した、ジャーナリスト・安田浩一の『沖縄の新聞は本当に「偏向」しているのか』(朝日文庫)。偏見・無関心・冷淡さ……沖縄に向けられる「本土」からの視線に、安田は何を思ったのか。(敬称略、「文庫版あとがき」の一部を抜粋・改編)
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2017年1月2日、東京のローカル局、東京メトロポリタンテレビジョン(MXテレビ)が情報番組「ニュース女子」で沖縄の基地問題を取り上げた。
取材陣が沖縄に飛び、新基地建設反対運動の「現場」を見て回ったとするものだが、主張も内容も、とても「報道」とは呼ぶことのできない悪質なデマ番組だった。
そもそも取材らしい取材はほとんどされていない。「徹底取材」と銘打ちながら、実際は物見遊山さながら街中を車で流すだけで、基地建設反対運動がいかに「怖い」ものであるのか、といったイメージ操作だけに時間を費やすものだった。
そのうえで「反対運動に日当」「取材すると襲撃される」「反対運動の黒幕は外国勢力」――といった手垢のついたデマや憶測が何の根拠もなしに報じられた。
結局、同番組が描きたかったのは「外国勢力と暴力に支配された沖縄」という歪み切った絵なのであろう。
バカバカしいにもほどがある。圧倒的な国家の暴力、あるいは右翼や差別者集団のヘイト攻撃によって被害を受けているのは、市民の側ではないか。
辺野古の現場では、機動隊員に組み伏せられ、締めあげられ、ごぼう抜きされる市民の姿を何度も目にしてきた。また、右翼や差別者集団による“襲撃”も珍しくはない。
街宣車で乗り付け、集団で反対派のテントに乱入し、そこにいた市民を殴って逮捕されたのは地元右翼団体のメンバーだ。この右翼団体の幹部にも話を聞いたが、「ぶつかりあうのは仕方ない」と開き直るばかりだった。そもそも辺野古で座り込む市民は右翼団体と「ぶつかりあう」ために集まっているわけではない。一方的に「ぶつかりあい」を仕掛けているのは右翼団体の側である。