そういう空気を生きている立場からすると、「黙っててごめんなさい」「わきまえててごめんなさい」という反省なんて、正直どうでもいいのである。反省すべきは、同性と手をつなごうともせず、むしろ嘲笑することで排除してきたことなのだ。自らの保身と出世のために。
福島氏も丸川氏も東大出身だ。「東大出身の女性」というだけで視線の色が変わるような社会で、常に紅一点的な立ち場がフツーであっただろう環境で、福島氏は弁護士時代から夫婦別姓やDV問題に取り組み続け、女性の人権問題に声をあげ続けてきた。福島氏は一貫して女性たちと手をつなごうとふんばってきた。それはもしかしたら、実はとても難しいことだったのかもしれないと、シスターフッドのあまりに欠けた国会を見て思う。シスターフッドとは女性が女性を信じ、手放さないという意思そのものの思想。その思想の対極にあるのが、今回の丸川氏の振る舞いだった。
この際だから言うが、「わきまえる」「わきまえない」という言い方も、森基準にこちらが合わせているようで正直、使い心地が悪い。女性の人権のために、政治家として最もわきまえた振る舞いをしているのが福島氏なのだという言い方もできる。だから、これからは「わきまえた」ことを反省するのではなく、女性と手をつなごうとしなかった過去を振り返り、時代の空気で反省するのではなく本気のシスターフッドを築いていきましょう。
そういう姿勢こそが、私たちの分断を少しずつ埋め、複雑に根付いた深い根を断ち切っていける一歩になるのだと思う。
■北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。作家、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表