フィギュアスケート世界選手権が3月24日に開幕する。今季はコロナ禍で大会が制限される中、世界最高峰の戦いが実現しようとしている。羽生は、宇野は、各国の有力選手は、どんな舞いを見せるのか。AERA 2021年3月29日号では、男子フィギュアスケート選手の世界選手権に向けた戦略や現在の心境などを取材した。
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フィギュアスケートの世界選手権が、ストックホルムで開催される。今季は2022年北京五輪の枠取りがかかった重要な一戦。一方で、コロナ禍の困難を超えて各国から集う選手たちにとっては、勝敗だけではない、お互いの健康と努力をたたえあう大会でもある。
今大会は無観客開催。選手や関係者らは、バブルシステムと呼ばれる、感染予防対策を徹底したエリアで過ごし、移動はすべて専用バスや通路で繋がれ、大会終了まで一度も外に出ることがない。すべてのインタビューはリモートで実施される。
異例尽くしだが、試合そのものは実にハイレベル。男女とも、メダル争いのカギは4回転だ。
■一人で自分を深く分析
男子は、羽生結弦(26)と米国のネイサン・チェン(21)が異次元の対決を見せるだろう。羽生は、今季初戦となった全日本選手権で、ショート、フリーで計6本の4回転を決め、319.36点で優勝。もちろん道のりは平坦ではなかった。昨年2月の四大陸選手権後は、練習拠点のカナダには渡ることができず、自主練習の日々が続いた。
「毎日一人で、コーチなしで練習をして、悩み始めると負のスパイラルに入りやすいと思いました。でも、一人だからこそ自分を深く分析し、自分のコントロールを経験するよい機会になりました」
苦境のなか、ショートとフリーの新プログラムはリモートで仕上げた。ショートはロックに乗って会場を盛り上げる「Let Me Entertain You」。
「音の取り方や手の振り付けは、自分のアレンジが入っています。こだわったのは押し引き。全部見どころみたいな感じにしようといろいろなものを加えて、その一方で、皆さんが呼吸できる場所も考えながら、振り付けを入れました」