日本全国どころか、世界各国から魚介類が集まり、取引金額では世界最大の東京・築地の中央卸売市場。東京都では、1973年から毎年、築地の中央卸売市場の魚介類を中心に、水銀濃度を調査している。
73年はどういう年かというと、メチル水銀に汚染された魚介類が原因となった水俣病が問題となっていたため、国が魚介類中の水銀の暫定的規制値を「総水銀0.4ppm、かつメチル水銀0.3ppm」と定めた画期的な年だ。自治体に検査の強化などを通知し、規制値を超えるものは販売をやめるなどの自主的規制等を行うこととした。
東京都の調査は、東京都福祉保健局健康安全部食品監視課が担当している。本誌では、2001年度から集計が出ている最新10年間の東京都の調査結果を読み解き、水銀濃度の経年変化をみることにした。総水銀の検出量の最大、最小、平均の値を公表しているが、本誌では、平均値で表を作成した。多い年では175種、少ない年でも95種について調べている。読者が興味ある、なじみのある40種類を選び、調べてみた。
水銀の値が高いのが、刺し身で食べることの多いメカジキやメバチマグロである。漁獲地が千葉、青森、タヒチ、オーストラリアなどのメカジキは06年度からの数値しかないが、01年度から数値のあるメバチマグロをみてみると、実に6倍以上に増えている。メバチマグロの漁獲地はニュージーランド、宮城などだ。このほかに、水銀の値が高い値で推移しているのが、キンメダイ(東京、千葉、静岡、高知、ニュージーランドなど)とクロムツ(東京、大分、長崎など)である。
濃度が高い魚として、高級魚の名前が並ぶが、では、どんな魚の水銀濃度が高くなるのだろうか。有害重金属の害とデトックス(体内の有毒物質・老廃物を排出すること)に詳しい、銀座上符(うわぶ)メディカルクリニック院長の上符正志氏はこう語る。
「マグロ、メカジキ、イルカなどの大型魚に水銀が蓄積しやすい。食物連鎖の上位に位置するため、水銀を含んだ小魚を食べることによって、水銀が体内にたまっていくのです」
東京都は、規制対象魚のうち国の暫定的規制値を超えた魚介類についても公表している。ただし、マグロ類やメカジキ、キンメダイなどは日本人の食生活を尊重してこの規制対象魚に含まれていないため、公表されていない。10年度ではキチジ、クロムツ、ハチジョウアカムツとなっている。クロムツは近年では「常連組」である。規制値を超えた魚が見つかった場合には、漁獲地を管轄する自治体に情報提供を行い、汚染魚の流通を防止している。
※週刊朝日 2013年5月31日号