これまでは家賃支出を抑えたい若い世代が中心だったシェアハウスだが、ここにきて対象が広がってきた。老人ホームや介護施設に入るつもりはないが、一人で暮らすには不安がある。そんな高齢者の新しい選択肢になりつつあるのだ。

 若者にとってシェアハウスが魅力的なのは、その手軽さにもある。最小限の荷物で入居し、自分に合わないと思えばすぐ退去すればいい。

 しかし、多くの高齢者にとって、新たな住居に移り住むのは容易なことではない。山のような荷物を抱えていたり、長年住み慣れた家の処分が必要な高齢者は多いだろう。そして、新しい暮らしが合わないからといって、またすぐ引っ越すことはままならない。

 また、要介護状態となったとき、介護サービスを併用するなどして、そこに住み続けられるかどうかも見きわめたい。運営にかかわるNPO団体などが、施設の情報提供を行うなどサポートをするところもある。

 シェアハウスについて研究している千葉大学助教の丁志映(チョンジヨン)さんは、単身高齢者の住まいの空き部屋を若者に貸す方法を提案する。いわば自宅をシェアハウスにしてしまうのだ。

「高齢者にとって住み慣れた環境を離れるのは大変。自宅の空き部屋に誰かが入れば高齢者は収入が確保できますし、入居者が信用できる人であれば、離れて暮らす家族も安心です」

 高齢者は持ち家率が高く、一人で空き部屋を持て余していることが多い。住宅が不足しがちな都市部では、そのストックを有効に活用できるという利点もある。運営や管理はNPOなど第三者に任せるのが現実的だが、自宅の有効活用は選択肢になりうるだろう。

週刊朝日 2013年5月31日号