「飲みすぎて体調を崩す方が年々多くなっていた。たくさん飲むことよりも一杯一杯を楽しんでほしいと考え、飲み放題の廃止を決めました」(イベントを主催する新潟県酒造組合)
東京都内の居酒屋に勤務する30代の男性もこう話す。
「コロナ禍前から『自由に注文したい』という声が増え、飲み放題付きプランは減少傾向でした。それでも忘年会や歓送迎会シーズンは売り上げのかなりの部分を占めていた。客単価が上がる飲み放題は店にとっても『おいしい』プランで、飲み放題がなくなっていくのは、客足の減少にプラスして大打撃です」
飲食店のコンサルティングを手掛ける江間正和さんによると、宴会では3千円程度のコース料理に1千~1500円ほどの飲み放題が付いて4500円程度で着地する「ロークラス」と、5千円以上の料理に2500円程度の飲み放題が付く「ミドルクラス」の2パターンが主流だという。客側にとっては、代金を事前に把握しやすいこと、単品注文よりも安くたくさん飲めることが主なメリットだ。
■コロナ後に「希望」2割
店にとってもメリットは大きい。前出の男性が勤務する店では、生ビールを含めた2時間飲み放題を1600円で提供する。単品注文だと生ビールは550円、酎ハイやハイボールは400~500円程度なので、客から見れば4杯で「元が取れる」計算だ。一方、原価は生ビールが200円弱、酎ハイやハイボールは40~60円ほどという。
「生ビールばかり何杯も飲まれると原価率が上がってきついけれど、そんなグループは実は少数派でたくさん飲む人でもハイボールなどが多い。大人数の宴会ならお酒を飲まない人もいて、さらに原価率は下がります」
江間さんもこう解説する。
「統計を取ると、2時間の飲み放題の場合、ほとんどのグループでひとり当たり3.5~5.5杯に収まります。それを考慮してメニューをつくれば確実に儲けがでるうえ、客単価が上がる、滞在時間が決まるので回転率を上げやすい、コース料理付きならオペレーションが楽、などのメリットがあります」
思う存分、好きなだけ飲みたいという需要は確かに底堅い。ホットペッパーグルメ外食総研が3月に行った調査では、「コロナが収束し、外食に行ける状況になったらどんな体験をしたいか」との問いに19.5%の人が「飲み放題」と回答した。