2018年5月、和歌山県田辺市の資産家で「紀州のドン・ファン」と呼ばれた野崎幸助さん(当時77)が急性覚せい剤中毒で怪死した事件で、和歌山地検は逮捕された元妻の須藤早貴被告を5月19日、殺人と覚せい剤取締法違反容疑で起訴した。
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和歌山県警は同日、札幌市在住の60代男性から16年1月、1170万円をだまし取ったとして詐欺容疑で再逮捕した。
野崎さんより55歳も年下の須藤容疑者は、事件の約3カ月前となる18年2月に結婚。その後は毎月、100万円の「お手当」をもらい、ほとんど東京で一人暮らしをしていた。だが、野崎さんが急死した当時(18年5月24日前後)は一緒に和歌山の自宅で過ごし、第一発見者でもあったので、事件当初から疑惑の目が向けられていた。
「野崎さんの遺体の状況、事件現場から外部からの侵入の様子はなかった。野崎さんが大好きな瓶ビールを2000本などを鑑定したが覚せい剤は検出されなかった。そうなれば、須藤容疑者か、お手伝いさんのどちらかしかいない。お手伝いさんから徹底的に事情聴取をして周辺も調べた結果、絶対に犯人ではないことがわかった。野崎さんを覚せい剤で殺害できたのは須藤容疑者しかいない、という消去法で逮捕、起訴に至った」(捜査関係者)
当初から和歌山県警は須藤容疑者を最重要人物とみていたが、逮捕、起訴まで3年近くがかかった。和歌山県警の捜査が大きく展開したのは、須藤容疑者と覚せい剤の「接点」だった。
和歌山県警は野崎さんの死因が急性覚せい剤中毒と特定されてから全国の警察などに須藤容疑者と覚せい剤で接点のある人物はいないかと、照会をかけてきた。それが今年になって「ヒット」したことで事件が進展したという。
須藤容疑者に和歌山県内で覚せい剤を売り渡した密売人グループを特定。密売人グループと須藤容疑者の携帯電話の位置情報やSNSの履歴が一致したという。
また、須藤容疑者は自身のスマートフォンからは覚せい剤の入手や殺害方法などを検索していた履歴が残っており、「外堀」は埋められていった。しかし、須藤容疑者の犯行を目撃した人物は誰もいない。犯行を事前にほのめかすような証言、証拠もない。