安倍晋三首相が打ち上げた新たな「成長戦略」。待機児童ゼロ、育児休暇3年など「女性の活躍」を目玉に掲げるが、実際のところ、働く女性にとって現実的とは言えないようだ。

 都内に住むAさん(32)さんは結婚したばかり。将来について話をすると、夫(34)はこう言い放った。

「キミには一生働いてほしいと思っているけど、子どもを保育園に入れるのはかわいそうな気がするんだよね」

 じゃあ、誰が子どもの面倒を見るんだよっ。

 Aさんは今年3月、大手自動車メーカーを退社した。社員は圧倒的に男性。入社して10年間、残業も休日出勤もいとわず働いてきた。上司や同僚との飲み会にも顔を出し、セクハラまがいの発言も笑ってかわしてきた。だが、近く結婚を考えていると報告すると、まず男性上司が聞いてきたのは今後の生活設計のことだった。

「子どもはどうするの?」「転勤はできるの?」
「将来的には産みたいと思っていますが…」

 そう答えて3月に受けた辞令は地方転勤だった。

「これは会社を選ぶか、家庭を選ぶか、という踏み絵だ」

 こんなに一生懸命仕事してきたのに──。怒りと落胆で体が震えた。考えてみれば、社内の女性管理職比率は0.1%未満。思い浮かぶ人は全員、独身か子どもがいなかった。

「たとえ転勤を受けても、子どもができたらイキイキと働き続けることはできない」

 1週間後、辞表を出した。

「そんな状況で、職場を3年離れるなんて現実離れもはなはだしい。安倍さんの話を聞いていると、女は『産めよ、育てよ、働けよ』と言われている気がする。ムリですから!」

AERA 2013年6月24日号