「我々の思いはむしろ逆です。“まなじりを決して”という言葉がありますが、決しなくていいし、学んでいくうちに芸能以外の目標に乗り換えてもいい。なぜなら、表現の根本を学ぶことで、どの世界でも通用するコミュニケーション能力を身につけられるから。もっとも重要なのは、まだ自分自身の魅力に気づいていない生徒たちが、学校でいろんなことに気づいていくことなんです。今の新入生が3年後、卒業する時にどう変わっているのか。それが楽しみですね」(吉田会長)

 自分の長所を効果的に表現するスキルは、芸能界を志す生徒のみならず、どんな進路を選んでも有効な武器になるはずだ。

 今年4月にWNOHに編入した奈良県の中山愛理さん(16)の将来の夢は「国際的に活躍すること」だ。
「職種でいうと営業職のような人と接することがやりたくて。その時、自信がなく見えたり、立ち方や声の出し方が汚かったりすると活躍できないと思うので、自分の魅力をセルフプロデュースする力を身につけたいと思って入りました」

 中山さんは卒業後、海外の難関大学への進学を志望している。週3日のWNOHの授業とN高のビデオ授業に加え、1日6~7時間を英語と中国語の勉強にあてている。地元の県立高校に通ったままでは、中国語を学ぶ時間がどうしても確保できなかったことも、編入を決めた理由の一つだという。

「私のように芸能以外の職業を目指す人が入っても大丈夫なのかなと、ずっと心配だったんですが、先生方もクラスメートも分け隔てなく接してくれます。なので、芸能界を目指す気はなくても、“芸能スキル”に興味を持っている人ならば、すごく有意義な学びの場になると思います」

(編集部・藤井直樹)

AERA 2021年6月21日号より抜粋

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