ソニーグループが営業利益1兆2023億円(2022年3月期決算)をたたき出した。営業利益1兆円超えは国内製造業ではトヨタ自動車に次ぐ2社目だ。家電の不振から復活した原動力は、そこで働く「ソニーな人たち」だ。
短期集中連載の第4回は、マーカス加藤絵理香さん(46)だ。男性が幅をきかせる日本企業において、女性のキャリア形成は容易ではない。彼女はソニーで、それを地球規模で成し遂げた。2022年12月12日号の記事を紹介する。(前後編の後編)
>>前編の記事
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1年後、復職にあたって、日本に戻ってきてほしいといわれた。でも、戻りたくはなかった。もう少し、ヨーロッパで仕事がしたかった。
「携帯電話は、まったく未知の世界でしたが、スウェーデンのソニー・エリクソン(当時)にいきたいといいました」
専門外の領域に飛び込むのも、知らない国で働くことも、ためらいはなかった。ソニー・エリクソンに入って2年後、アンドロイド搭載スマートフォンの世界導入のプロジェクトに関わることができた。業績回復の途上にあり、苦しい時代だった。エリカは、ソニーのスマートフォンXperiaに搭載される自社開発アプリの企画を担当し、その後そのチームを統括することになる。グローバルな拠点に散らばる開発メンバーの取りまとめ役だ。
スウェーデンには8年いた。「そろそろ次にいかなければ。何か新しいことをしなければ」と思った。そのタイミングで、米国のソニー・ネットワークエンタテインメントインターナショナル(現ソニー・インタラクティブエンタテインメントLLC)から声がかかった。06年に本格的にサービスを開始した「プレイステーションネットワーク(PSN)」の部隊だ。
「プレイステーション4(PS4)」が欧米で発売された13年、米国・西海岸に渡った。当時、ソニーのゲーム事業には社の運命がかかっていた。「PS4が成功しなかったら、この会社は終わる」という危機感を、誰もが持っていた頃だ。PSNの成否は、いかに多くのコンテンツを集め、配信するかにかかっていた。エリカは、ネットワークサービスのサービスプランニングを担当した。