プラシド・ドミンゴ((c)Fiorenzo Niccoli)
プラシド・ドミンゴ((c)Fiorenzo Niccoli)

 当時、3人の姿にくぎ付けになったのが、黒柳徹子さんだ。「テノールが歌のパートでは一番難しいでしょうね。世界的なそのテノールが3人そろって歌うのは奇跡的なこと。一番最初、3人が出てきた時には、ほんとに夢かと思いました」

 黒柳さんはNHK時代の1959年、イタリアオペラが来日した際、名テノールのマリオ・デル・モナコに花束を渡したことがある。その時に接したオペラがきっかけで、オペラに夢中になった。「三大テノール」にも魅力を感じ続け、長寿テレビ番組「徹子の部屋」にドミンゴは2回、カレーラスは1回出演した。

「2人ともとても謙虚で、やさしくて、ユーモアがあって、世界のトップなのに、非常に思いやりがある感じの会話をなさるので、びっくりしました」

 ドミンゴとはニューヨークで会った1970年代からの知り合いだ。「その時、ドミンゴさんがオペラに出ると、みんなが『ドミンゴ、ドミンゴ』って声を上げて。つまり既にピークだったと思う。90年代、番組でドミンゴさんにうかがったんです。『あなたはどうして歌い続けられるのか』って」

 その答えに強く心を打たれたという。

「そしたらね、『私は舞台に出る時、神様に祈るのです。オーケストラ、コーラス、スタッフたち、みんな精いっぱいやっていることを、神様、どうかわかってください、お願いします、と。それで一生懸命歌うのです』とおっしゃっていました。いつも謙虚な態度でいらっしゃるから、こんなに長くトップで歌い続けていられるのかなと思いました」

 東日本大震災の影響で、海外アーティストが軒並み来日を中止する中、ドミンゴは日本で公演し、「故郷」を日本語で歌った。

「感動的でした。そういうところもあるせいか、オペラは、ドミンゴが一番いいですね。あんなに演技がうまいオペラ歌手って見たことがないです。どんな嘘(うそ)っぽい話でも、嘘に見えない」。ドミンゴ愛は尽きないが、ほかの2人についても称賛する。

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