ホセ・カレーラス
ホセ・カレーラス

「パヴァロッティもうまい。2人は演技に柔軟性がある。歌だけじゃなくて、オペラもうまいのです。カレーラスは、大病しても歌える喜びがあるんじゃないかな。甘い感じのハンサムな人で、それまでのオペラ歌手にはないタイプ。3人とも歌うのが好きなんだと思いますね」

■世界の一番同士、ほんとに仲良く

「三大テノール」は90年を皮切りに、サッカー・ワールドカップが開催される4年ごとにコンサートが開かれた。ほかに世界ツアーなどもあり、2003年まで続いた。

「ちょっとユーモアのある、子どもっぽいところがあって、3人で歌う時に、1人が歌っていると、後(あと)の2人が『俺たちも、ああいう風にやろう』と、ひそひそ示し合わせて、という面白い場面もありましたね」。「オー・ソレ・ミオ」はそうだった。

「そして、うまーく真似して、みんなで大笑いして終わるっていうところも、世界の一番同士がそこで仲良く歌っているっていうのも、素敵でした」

 確かに、世界トップ級の芸術家たちの間では、対立は日常茶飯事だ。

「一人ひとり違う声なのに、音色がそろう。3人はほんとに仲がいいんですものね。きっとあの人たち楽屋に帰っても冗談言っているんだろうな、という感じですよね。魅力的な声の持ち主は魅力的な人間であると、私は思います」

 今回のコンサートは、そのムードを引き継ぐに違いない。

「2人の仲のよさも味わえるコンサートでしょう。今でも歌っている2人は本当に驚異的です。名ソプラノのマリア・カラスが最後の日本公演でさーって出てきた時に『出たーっ』っていう感じがしました。そのような、素晴らしい人間が出てきたっていうこと自体、感動的で大事なことなんです。そういうものがほしくて、みんな劇場に行くんですものね」

 ドミンゴも日本のコンサートに期待を寄せる。

「日本の皆様、ホセ、素晴らしいソプラノ歌手のニーナ・ミナシャンと、音楽の夕べを共に過ごし、私たちの親愛なるルチアーノに大きな愛情と称賛を表現することができる、このコンサートをとても楽しみにしています」

 黒柳さんは「天上の声が聴きたければ、お二人の歌を聴きにいらしたらどうですかって言いたいです」と力を込める。(米原範彦)

※週刊朝日 2022年12月16日号