市役所庁舎内の浸水は約1メートル、駐車場でも1.1メートル程度。それでも、職員の車など約300台、同市が保有する公用車の約3分の1にあたる74台が水に浸かってしまった。電気の復旧までは丸2日かかったという。
常総市のケースは特異な例ではなく、全国の多くの市区町村でも起こりうることだ。表にあるとおり、福島県いわき市、兵庫県尼崎市、岡山県倉敷市などでは最大10メートルの浸水が予想されている。愛知県豊田市の浸水深は最大20メートルだ。
だが、浸水する可能性があるからといって、役場を移転するのは容易ではない。そこで、浸水を前提とした役所づくりをしている地域もある。
海面水位より低いゼロメートル地帯が広がる東京東部の江戸川、足立、葛飾、墨田、江東の5区は、浸水想定区域内に人口の約9割にあたる約250万人が居住している。各区役所の出張所など、災害時に情報共有の拠点となる公的施設の多くも浸水する可能性がある。
そこで葛飾区役所や計画されている江戸川区役所の新庁舎では、1階部分をピロティ(吹き抜けの半屋外空間)にして主な設備は2階以上に配置し、水害が起きても役所機能に影響がないように対策している。常総市役所も、6年前の失敗を教訓として、浸水を前提とした対策を取っている。
「1階にある非常用電源装置は重くて上層階に移動できないため、前回の浸水深を超える高さのコンクリート壁でおおい、庁舎の周囲には防水壁を設置しました。それでも浸水する恐れのある場合は、高台にある体育館等の公共施設に災害対策本部が設置できるようにしました」
災害時は想定している以上の対策はできない。自分が住む地域の役場ではハザードマップを生かした対策ができているのか。あらためて確認しておきたい。
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※週刊朝日 2021年7月16日号