五〇〇点以上の作品が出品されるのですって? 凄いなあヨコオさんは!
気易く喋りかけたりしていたけれど、こんな凄い人、三拝九拝してから話しかけないとバチが当たるかも!
「何を描くかではなくて、
どう描くかでもなく、
如何に生きるかでもなく……」
とヨコオさんの言葉がささやいています。
毎週、お手紙をもらっているのを、当然と思っていたのは、とんでもない思い上がりで、世界の天才のヨコオ画伯をもっと尊重して、へりくだって付き合わないと、バチが当たるかも!といっても、今更、したことのない他人行儀なふるまいや、ことば使いをしたら、ヨコオさんがびっくりして、ひっくりかえってしまうかも……
でも、とにかくこの展覧会には私も行きます。車椅子を用意してもらって、まなほに押してもらえば、見にゆけると思います。まあ、これを逃せば、もうヨコオさんの展覧会は見られないと思います。
もう三年以上も上京してないし、ホテルにも泊まっていません。これが何もかも、最期になるでしょう。寂庵のスタッフも行きたいなら、みんなつれていきましょう。ヨコオさんの原郷や幻境を、しっかり眺めさせてやりましょう。
そんなことを考えると、胸がワクワクしてきました。
ところでヨコオさんが上京して、美大の受験をしようとした時、ついてきた美術の先生が、受験はやめて、家に帰れといい、ヨコオさんはそれに従って、帰ってしまったという話、何度聞いてもハラがたちます。その先生はまだ御生存ですか? もしそうなら、今のヨコオさんの展覧会の噂なんか聞いて、どんな顔をしてるのでしょう。でも、すべては、時の流れが洗いながします。
会場で、お目にかかれたら、嬉しいけれど、逢えなくてもかまわない。
そら行け! 原郷へ!
※週刊朝日 2021年7月16日号