そして共産党が、世界で最も信頼できるのはソ連だと強調していたので、私もそれを信じていた。だが、1965年に世界ドキュメンタリー会議が開催されたとき、なぜか日本から私が選ばれ、開催地のモスクワに飛んだ。そこで、ソ連には実は、言論・表現の自由というものがまったくないことを知ったのである。
実は、共産党も幹部の言うことに反論はできず、厳密に言えば、言論の自由はない。そこで、80年代に上田氏に「あなたが共産党を離党したら、私はあなたを全面的に応援するのだが」と本気で言った。すると上田氏は、「それはありがたいが、共産党だとナンバー2だが、離党するとただの一人になってしまうからね」と、極めて苦しそうに言った。そういう、言ったら損になる本音を言うところを私は信頼しているのである。
また、不破氏に「あなたが、この国は本気で認められるという共産主義の国はどこか」と問うと、「残念ながら現在はない」と答え、「では、あなたの主張は空理空論ではないか」と突っ込むと、「だから何とかして構築しなければならない」と苦しそうに述べた。不破氏もまったく駆け引きをしない人物なのである。
田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数
※週刊朝日 2021年7月23日号