いったい何が起きているのか。

 感染研は、理由の一つとして、SFTSだと診断できる医療機関が増え始めたため、多くの地域で報告されるようになっている可能性を指摘しつつ、こう懸念を示す。

「ウイルスを保有したマダニが、西日本から拡大しているのではないか」

 マダニは動物の血を吸って成長する。主に野生動物が生息する場所や、民家の裏山、畑などに住むとされる。本来、人間との接点は少ないはずだ。

 だが、感染研によると、近年、外来種を含め野生動物が増加している地域があり、それに伴いマダニの数も増える。さらにマダニがくっついた野生動物が人の生活圏に入ってくることで、マダニがわれわれの身近な場所に運ばれてきている恐れがあるという。

 確かに、民家の屋根裏に野生動物が住みついたなどという話題は、見聞きするところだ。

「人間の感染が報告されていない地域でも、SFTSに感染し抗体を保有している野生動物がいる例もあります。今後、感染地域が拡大する可能性は高いと考えられます」と感染研は警鐘を鳴らす。

■ゆるキャン△コラボで啓発

 新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、「密」を避けようとキャンプを始める人も増えてきている。

 感染地域が拡大する恐れを注視している厚労省も、今年はキャンプを題材にしたアニメ「ゆるキャン△」とコラボしたポスターを作成。「例年よりマダニ対策が目立つ内容にした」(同省)と、肌の露出を控えたり、虫よけ薬の活用、ペットの対策も万全にするよう啓発している。また、マダニに咬まれた際は無理に引き抜くと体液を逆流させる恐れがあるため、医療機関で処置してもらうよう呼び掛けている。

「新しい感染症であるため、医療機関が診断できていない場合もあると考えています。発生地域以外のお医者様にもSFTSを疑って診断していただくことが重要だと思います」(感染研)

 医療機関頼みではなく、公園やキャンプに行って遊ぶ側も、マダニについての対策とSFTSの知識を身につけておく必要がありそうだ。(AERA dot.編集部・國府田英之)

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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