というか、そこまで出来るだろうという空気感、もしくはするかもしれないという空気感は、正しいことをしようとしている者の口を塞(ふさ)いでしまうことにならないか。
市井の敏感な人も、これを懸念していた。政府に逆らったりすれば(デモを主催するとか参加するとか)、目をつけられ、個人情報から罪をでっち上げられたりすることになったりはしないかと。
馬鹿にされがちなこの手の懸念が政府内から出てきたのは、それが核心をついていたことの証左だろう。
マイナカードの不安はこれだけじゃない。関連システムにかかる予算が2021年度は113億円だったのが、今年度は290億円に増えている。
それは古いシステムで、特定企業の製品に頼っているから、コストが高くなるとわかったばかりだ。
古いシステムで管理される、あたしたちの個人情報。最先端のデジタル化でコストカットするといっていたのに、なんか期待していたものと違う。人々を奴隷のように繋(つな)いでおく鎖みたいだ。
室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中
※週刊朝日 2022年12月9日号