だがワクチンへの不安をぬぐいきれない人もいるようだ。
1回目の接種を終えたという女性(19)は、動画アプリ「TikTok(ティックトック)」のコメント欄で「ワクチンを打つと不妊になる」との書き込みを見た。「デマだろうけど心配にはなります」
医療系の大学に通う20歳の女性は、ワクチンの仕組みは理解していると前置きした上で、「TikTokに、コロナ禍は何者かの陰謀なんだと報じるアメリカのテレビ番組の映像があがっていた。こんな動画を見たら陰謀論を信じてしまう人もいるよなーとは思った」。
19歳の女性は「本心では打ちたくないし怖い。でも親に受けろって言われるし、社会としても打たないのはよくないことという風潮だから、打たない選択肢ってもはやない」。25歳男性は「行動制限が緩和される気がするから打つつもりだけど、5年後どんな影響があるのかなんて誰もわからないし不安」。18歳接客業男性は「それに若い世代は死ぬ確率低いし」。
ほかにも「安全性に疑問」「副反応は心配」といった感想が目立った。
元大阪府知事の橋下徹氏は先月31日、娘がワクチン接種を拒否していることを出演番組内で明かした。「子宮に影響がある」というネット情報を見て不安を抱いたようで、「お父さん、それは50年後、絶対大丈夫っていうことを保証できるの?」と口にしたという。
メディア史を研究する佐藤卓己・京都大大学院教授は「流言の広まりは政府への信頼低下のバロメーター」と話す。一見とっぴなうわさでも信じるのは、「人が、よくわからない状態に耐えられないもの」だからという。
「複雑な事象をすぐに理解しようとすると、陰謀論やデマは魅力的に映る。何かの情報に触れて飛びつくのではなく、判断材料としてストックし、吟味する忍耐力が求められる」
冒頭の平塚さんは、陰謀論という言い方自体を否定する。
「コロナ禍の本質は、地球を支配する権力者たちによる大衆の奴隷化なんです。人々の連帯を断ち切り、生活のオンライン化によって個人をコントロールしやすくする。陰謀論ではありません。こう考えると全てつじつまが合うんですよ」
何を信じるかは人それぞれではある……。
※週刊朝日 2021年8月20‐27日号