五輪開催による政権浮揚策は、失敗に終わりました。五輪閉幕後の菅政権の支持率低下がそれを物語っています。この「翼賛体制」に協力した文化人、芸能人、タレントたちの総括も聞いてみたいものです。参加者全員がマスク着用で登場した開会式と閉会式、五輪史上異様なその映像をドキュメンタリーに制作する役割を背負った映画監督の河瀬直美さんが、この問題だらけの大会をどんなふうに記録するか、興味があります。

 五輪の虚構がこれだけあきらかになった日本が、この先の将来、ふたたび五輪を誘致することは二度とあるまい、と思います。莫大な授業料を払って日本と日本人が学んだのはそういう負の遺産でした。(寄稿)

うえの・ちづこ/1948年、富山県生まれ。社会学者、東京大学名誉教授。専門は女性学・ジェンダー研究。認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク理事長。近著に、『在宅ひとり死のススメ』(文春新書)、『情報生産者になる』(ちくま新書)、『おひとりさまの最期』(朝日文庫)。

週刊朝日  2021年9月3日号

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