カトリーヌあやこ・漫画家&TVウォッチャー
イラスト/カトリーヌあやこ
漫画家&TVウォッチャーのカトリーヌあやこ氏が、「ハコヅメ~たたかう!交番女子~」(日本テレビ系 水曜22:00~)をウォッチした。
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元エース刑事・藤(戸田恵梨香)と、ひよっこ警察官・川合(永野芽郁)交番女子コンビがいい。どちらも迷いなく白目を剥(む)ける女優コンビ。原作漫画を描いているのは、元警察官の泰三子(やすみこ)さんだ。
リアル女性警官のネタだけに、今までの刑事ドラマとはひと味違う。熱血刑事がバンバン発砲したりしないし(まず説得)、サイコパスな犯人が五輪の閉会式みたいなコンテンポラリーダンス踊ったりしないし、勤務後に美人女将(おかみ)のいる小料理屋に寄ったりもしない。
「安定している公務員ならなんでもよかった」と警察官になった川合は、交通違反の取り締まりでドライバーから罵倒され、「頑張れば頑張るほど嫌われる仕事」と嘆く。
一方、同期から「人の皮をかぶったマウンテンメスゴリラ」と恐れられる藤。彼女は気持ちよく違反切符を切りたいがため、能面フェースで「どうせ来るならクソ野郎……」と、静かにつぶやきながらテキパキクソ違反者を取り締まる。
どこまでウソでどこまでマコトか、ちりばめられる「警察あるある」に興味シンシンだ。防犯カメラの動画を見続けるという目玉乾きの苦行。
特捜は、いかつい顔大集合のコワモテ博覧会。刑事のリーゼントで、その町の治安状態がわかる(くずれていたら大忙しの証拠)。夏の女性警察官は眉毛が消えがち。
一度でいいから見てみたい。鬼教官・風間(木村拓哉)vs.ホンワカ交番女子のガチンコ勝負。
でもこのドラマ、のほほんとしてるだけじゃない。一見地味な交番勤務。落とし物に迷子の犬、夫婦げんかの仲裁に交通安全教室。そんな日常に、ふいにリアルな影が差す。自殺予告の電話、女子高生の性被害、事故現場に横たわる赤ちゃんの遺体。
どうすればよかったか、彼女たちの自問自答は視聴者に投げかけられる問いでもある。
「私たちはプリキュアじゃない。ヒーローじゃないんです」と、川合は言う。けれど彼女たちの一つひとつの地道な行いが、毎日の事故や事件を未然に防ぐのだ。今度から交番の前通る時、心の中でめっちゃ拝みます。
カトリーヌあやこ/漫画家&TVウォッチャー。「週刊ザテレビジョン」でイラストコラム「すちゃらかTV!」を連載中。著書にフィギュアスケートルポ漫画「フィギュアおばかさん」(新書館)など
※週刊朝日 2021年9月17日号