伊藤潤二さん(撮影/写真部・東川哲也)
伊藤潤二さん(撮影/写真部・東川哲也)
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 今年で漫画家生活、34年目を迎えた伊藤潤二さん、近年は海外で注目を集めている。作品のほぼすべてが20を超える国・地域で翻訳出版され、さらに今年はもっとも権威のある漫画賞、アメリカのアイズナー賞で2部門受賞の快挙を遂げた。世界中のファンを魅了する伊藤潤二さんの新作「幻怪地帯 Season2」のAERA.dotでの連載を記念して、仕事場や作業道具をご紹介いただきながら、作品の魅力について初の自撮り動画を通して語ってもらった。

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 伊藤潤二作品といえば、奇想天外なストーリーにまず目を魅かれるが、リアリティーを感じさせる緻密な絵、美しいキャラクターたちも評価が高い。

「絵にはデビュー時からこだわりがあるので、そう言っていただけると大変有り難いですね。現在すべての作画作業はパソコンを使ってフルデジタルで描いています。ネームといわれる絵コンテもパソコンで行っています。またアシスタントは頼まずに、最初から最後までひとりで作業しています。昔から仕事の効率を上げるために、いかに快適に作業できるかを考えていて、例えば漫画の絵を描く液晶タブレットに自作の台を設置して、角度を変えられるようにしたり、画面にアクリル板を貼って、熱を防げるかどうか試したりしています。また、液晶用のペンも使いやすくするために、指先が当たる部分にパテを塗って、手に馴染みやすいように加工しています。元々はボタンが付いていたんですが、パテで埋めてしまいました。メーカーさんは推奨していないと思いますが……。仕事の合間にホームセンターに行って、さまざまなDIYをして、自分にとってベストな仕事場、環境作りをしていくことが息抜きでもありますね」

 前作「幻怪地帯」では、東北のある村の葬式で「泣き女」に出会ったカップルに異変が起こったり、青木ケ原樹海を訪れた男女が不可思議な現象に巻き込まれていったりと、独創的なストーリー展開と緻密な絵の魅力は変わらず、圧倒的な伊藤潤二ワールドで読者を魅了した。


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