「2019年に発表した『センサー』は、当初、一種の紀行物として描こうとしていたんですが、うまく成立させられませんでした。その雰囲気を受け継いで『幻怪地帯』という異郷で起こる怪異のようなものを意識したタイトルにしました。また読み切り短編集ということで、さまざまな場所で起こる怪異、見たことのない世界を描ければと思います」
伊藤潤二作品は「富江」や「うずまき」などの連作シリーズが有名だが、「首吊り気球」や「阿彌殻断層の怪」などの秀逸な短編が多いことでも知られている。
「自分としては読み切り短編作品が一番のびのびとできる仕事だなと実感しています。ある意味、自分が得意とする分野で読者の皆様に驚いていただいたり、できるだけ満足していただける作品を作っていきたいです」
「幻怪地帯 Season2」は、オムニバスシリーズということで、1話完結の短編を週1回公開していく。第1回の魅力は?
「第1回は『塵埃(じんあい)の魔王』というタイトルの作品です。舞台となる古い旅館が次第に不気味な埃にまみれていく様や、埃が登場人物の心に及ぼす負の影響、家政婦の美魔女ぶりなどに注目してもらえたらと思います。元旅館の屋敷の屋根裏の秘密も楽しんでいただきたいですね」
>>『幻怪地帯 Season2』第1話 塵埃の魔王(1)はこちら
(書籍編集部・原真紀子)
<著者プロフィール>
伊藤潤二(いとうじゅんじ)/1963年生まれ。1987年、「富江」でデビュー、後の代表作となる。他にも「双一」シリーズ、「死びとの恋わずらい」「うずまき」「ギョ」など代表作多数。現在も精力的に活動し、名作を生み続けている。2019年に「フランケンシュタイン」、2021年に「地獄星レミナ」と「伊藤潤二短編集 BEST OF BEST」でアメリカのアイズナー賞を受賞。