人気ドラマ「ドクターX」シリーズをはじめ、数多くの作品で独特な存在感を示してきた俳優の岸部一徳さん。作家の林真理子さんとの対談で、コロナ禍の撮影事情や2人の「恩人」について語りました。
【沢田研二は「どんなときでもプライドを貫く」 岸部一徳が語る人となり】より続く
* * *
林:コロナでお仕事のほうはいかがなんですか。
岸部:最初の1年ぐらいは、撮影現場なんかもほとんど全部中止だったんです。その分の仕事が、今年にみんな回ってきている、という感じですね。
林:それじゃあ、お忙しいですね。秋から「ドクターX」も始まるみたいですし。
岸部:あのシリーズはもう10年目ですけど、始まったのは林さんと前回対談したあとですかね。米倉(涼子)さんも、ここに出たんですか?
林:はい、以前出ていただきました。脚本の中園ミホさんにも。岸部さん、あのドラマになくてはならない存在で、「メロンです!」「請求書です!」が決めゼリフで、華麗にスキップしているところも有名ですし、すごく楽しそうな役柄ですね。米倉さんも大女優への階段を着々と……。
岸部:そうですね。
林:でも、どこかのメディア報道で読みましたけど彼女、「俳優として、役の色がつきすぎるのはちょっと……」と話しているとか。俳優さんって、そういうことを考えるものなんですね。
岸部:主役の人はそうなんでしょう。同じ役をずっとやっていると、どうしてもそのイメージがついてきますからね。僕なんかだと、いろんな役をやるので、「この役のイメージ」というふうにはなりませんけどね。
林:樹木希林さんが、生前、何かのインタビューで「私みたいなポジション(脇役)がいちばんいい。いろんな作品に出てお金が稼げるし、責任をとらなくてもいいし」とおっしゃっていました(笑)。岸部さんもそんな感覚をお持ちなんですか。
岸部:僕は、そんなに引っ張りだこでもないですよ。でも、希林さんは昔からそう言ってましたね。希林さんは四つぐらいしか年上じゃないんですけど、大先輩みたいな気分でしたね。僕、音楽の世界に入るときに、内田裕也さんが見つけてくれて東京に出てきたんですよ。