左から野田聖子幹事長代行、菅首相、岸田新総裁、高市早苗前総務相、河野太郎ワクチン担当相(C)朝日新聞社
 岸田氏が1回目からトップに立ち、決戦投票でも大差で勝利したことから自民党で20年以上、政務調査会の調査役を務めた政治評論家の田村重信さんはこう予測する。

「党員票では河野氏が上回ったが、トータルでは2回とも岸田氏が勝った。他から雑音が入らないので岸田氏は組閣、人事がやりやすくなりますね」

 今後の焦点は、岸田政権の党幹部人事と組閣だ。岸田氏は総裁選中、自身が当選した暁には、候補者を要職につけると話していた。また、岸田氏は当選後の挨拶で、「衆院選、参院選がある」と繰り返していた。

「まずは選挙に勝てる人事になると思います。選挙で人気なのは、河野氏と小泉進次郎環境相。この2人が選挙の顔になる人事になると思う」(前出・岸田派幹部)

 そこで、注目されるのが幹事長だ。2012年の総裁選では、安倍晋三前首相は決戦投票で争った石破茂氏を幹事長につけ、直後の政権交代となった衆院選挙に大勝した。幹事長には河野氏が有力視されているという。だが、安倍氏が率いる最大派閥、清和会の国会議員はこう語る。

「河野氏が議員票で3位、高市氏は2位。岸田氏が当選した裏には安倍氏のサポートがあったことは明らかだ。高市氏が女性として初の幹事長になれば、斬新さをアピールできる」

 河野氏はこれまで党三役の経験がないことから、政調会長という声もあるそうだ。そして、もうひとり注目されるのが、麻生太郎副総理兼財務相だ。

 麻生氏は派閥の一員である河野氏でなく、岸田氏を最初から支持したという。麻生氏の信頼厚く、岸田選対の顧問でもあった、甘利明税調会長を財務相に起用という見方もある。

「岸田氏が一番、頭を悩ませるのが麻生氏だろう。甘利氏を財務相に据えて、麻生氏には副総理にプラスなんらかの肩書で処遇することになるのではないか。二階幹事長も5年あまり続けた幹事長の椅子から去る。いつまでも麻生氏が副総理兼財務相で動かないというのもちょっとね」(前出・岸田派幹部)

次のページ 二階派の票が岸田氏へ流れた理由