また、初戦は大敗した大宮アルディージャVENTUSも、翌週の第2節で3,500人に迫る観客を集めている。「ゼロから始まるチームを、一緒に作っていきましょう」という鮫島彩らの呼びかけに応じる形で、男子チームのサポーターも足を運び、開幕前に行われたプレシーズンマッチ(PSM)からスタジアムをすばらしい雰囲気で包んだ。

 PSMの2試合で結果を出せなかったことに危機感を抱く選手もいたが、NACK5スタジアム大宮の熱は衰えなかった。「苦しい時期を支えるのがサポーター」ということだろう。開幕前のトレーニングに励むチームを見つけ、外回りを少々寄り道して「がんばってね」と声をかけて去る地元商店街の方もいた。地域密着活動の成果は、そんなところにも見えている。

 今季は、味の素フィールド西が丘をホームスタジアムに定めた日テレ・東京ヴェルディベレーザも、開幕戦チケットは当然のように売り切れ。ホーム2戦目となった第3節も1,720人の観客を集めた。こちらも、試合会場近くの北区、板橋区でアピール。地域用のポスターも作成し、同地区限定で放映されるコミュニティ番組にも選手が出演している。

 地元を徹底して踏み固めるやり方が、成果を結んでいる。

 リーグがプロ化されたことで「どうやれば、女子サッカー選手のステータスを高められるか」を意識する選手が増えた。

 大宮Vの乗松瑠華は「見に来てくださっている方のためにプレーするとか、絶対に勝ちにこだわってプレーするとか、やるべきことは変わっていないと思います」と前置きしたうえで「リーグのことをちゃんと理解して、どうやって盛り上げていくか。『WEリーガークレド』についても、みんなが積極的に参加し、考えてくれました」という。

 奇数チーム制のため、毎節、試合がないクラブが出るが、該当クラブは理念推進日(WE ACTION DAY)として、WEリーグの認知度、ステータスを上げる活動に従事する。次節はノジマステラ神奈川相模原。松原有沙は「地域とのかかわりを増やす機会を作って、WEリーグを知ってもらう取り組みをしていますが、理念推進日だけでなく、いろいろなかたちで発信していくことが大事だと思います」。

 ひとりのWEリーガーとして、ファンサービスや社会貢献活動に取り組み始めた選手もいる。三菱重工浦和レッズレディースの池田咲紀子らは、ホームスタジアムに招待シートを用意し、マイナビ仙台レディースの浜田遥は、自分のゴール数とチームの勝利数に応じて、地元と恵まれない国の子供たちへサッカーボールを送っている。

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