高座を袖から拝見。たにし先生が楽しげに歌ったり踊ったり……それを勘太郎先生が怒鳴り散らしながらツッコむというかんじ。筋とか流れとかフリとかあるんだろうけど、だんだんそんなものどうでもよくなってきて最終的に客席爆笑。次の日も、また次の日も。なんなんでしょう。すべってるの見たことない。すべるどころか、古寺の石庭に水を打ったように静まっている客席を、町中華の鉄鍋の如く激熱にひっくり返す。「ホームランがウケないんならもうどうしようもない」と言う芸人も。芸種は違うけど、袖から見ていてアレだけウケたら「さぞ気持ち良かろうなあ」と思うのです。もちろん色んな修羅場をくぐってきたからこその地肩の強さ。
叶うことなら木戸銭を払ってお客として、前に回って二人揃ったホームラン先生を観たかったな。勘太郎先生の最後のツイートは「おーたにさーん! 40号、9勝目!」からの「8でした早とちり。ごめんなさい」という『ホームラン』がらみのものでした。ほんと「早とちり」であって欲しいですよ。65なんて早過ぎです。ただただ、合掌。
春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。新刊書籍『人生のBGMはラジオがちょうどいい』(双葉社)が発売。ぜひご一読を!
※週刊朝日 2021年10月15日号