会場からは笑いが漏れたが、科学部記者は「核心をついている。真鍋氏の頭脳を生かせない日本の科学界、社会は危機感を持つべきです」と警鐘を鳴らす。

「日本の優秀な研究者が海外へ流出するのは待遇も環境も海外の方が良いからです。日本では自分のやりたい研究に使える費用、時間が限られている。そうなると失敗を恐れて冒険しなくなる。画期的な発明が生まれる土壌ではなくなってしまう。調和を重んじる日本人の国民性が決して悪いわけではありません。世界でも日本人の協調性を高く評価している。ただ、真鍋さんが会見で言われたように、日本は科学者と政策決定者の間のコミュニケーションを取れていない。科学は成功の裏で試行錯誤の連続です。失敗を許容する文化も大事だと思います」

 真鍋氏の提言をどう受け止めるか。日米両国の環境で研究に没頭しただけに、その言葉は大きな価値がある。(松木 歩)

▼▼▼AERA最新号はこちら▼▼▼