
そんな、俳優として大きな気づきを得た中で出合った映画が「宮松と山下」だ。NHKでドラマ演出を行ってきた関友太郎さん、メディアデザインを手掛ける平瀬謙太朗さん、教育番組「ピタゴラスイッチ」を手掛けてきた東京藝術大学名誉教授の佐藤雅彦さんの3人からなる監督集団「5月」による初の長編監督作品。津田さんが演じるのは、香川照之さん演じる主人公・宮松の妹の夫役だ。役名を健一郎という。

「正直、台本読んだ時点では、つじつまが合わないところも多かったですし、自分の中で健一郎という役の感情をどうつないでいけばいいかわからなかった。自分なりに構築して現場に行ったら、それも全否定されました(笑)。でも、現場の雰囲気が北野組とも似ていて、監督たちのこだわりがめちゃくちゃ面白い感じに暴走していくんです。で、そのほうが、スタッフも出演者も生き生きしていって。完成作を観たときには『これぞ映画だなって要素がギュッと詰まってて、映画はこうあるべきだ』と思いました。とにかく、観客を信用して作られている映画だという気がしたんです。この映画は、結局何が言いたかったんだろうと考えたとき、『俺はこう思った』って、お客さんが思えるような。大げさに聞こえるかもしれないけど、『神様に捧げる映画として作っている』と確信できる豊かさのある映画です」

(菊地陽子、構成/長沢明)
※記事前編>>『北野武監督から丸投げされた「アドリブ芝居」も 津田寛治の俳優としての原点』はコチラ
※週刊朝日 2022年11月25日号