批評家の東浩紀さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、批評的視点からアプローチします。
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筆者の会社は「シラス」という動画配信プラットフォームを運営している。19日で1周年を迎えた。
シラスは全番組有料を掲げる変わったサービスである。いまはネットでは無料が主流だ。そのため配信者も視聴者もページビュー連動の広告収入に従属させられている。それゆえ逆に有料を原則とした。現在登録者は2万5千人強で24のチャンネルが開設されている。登録者数10万、チャンネル数100が目標だ。
ITプラットフォームは何百万、何千万という数が基本である。それに比べればあまりに小さな商いだが、シラスは人文系や時事評論、芸術系などのマイナーなコンテンツの流通をミッションとしている。新書が5千部売れればいい時代に、2万5千人はけっして無視できる数字ではない。論壇の劣化が謳(うた)われて久しいが、改善の足場になればと考えている。