本好きとして知られるお笑いコンビ「ハリセンボン」の箕輪はるかさん。AERA 2021年11月8日号は、本とのかかわり方や自分の中で「両極」に位置すると感じる本などを教えてもらった。
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よく読むジャンルは小説です。とくに夢と現実のはざまを描いた物語に惹かれます。ホラーやSFのような異世界を舞台にした作品も好きですね。
ベストセラーや何かの受賞作のようなものよりも、まだあまり人目についていない、誰かが手に取ってくれるのを待っているような本を見つけたい。そんな勝手な思いがあって、新しい人の新しい本を探しています。今回は自分の中の両極本ということで、「読んでいるところを人に見られたい/隠したい」というテーマで選んでみました。
まずは『夢の遠近法』。山尾悠子さんの初期の作品集で、心の中にスーッと入りこんでくるような素敵な景色をいっぱい見せてもらえる一冊です。中でも、山尾さんのデビュー作である「夢の棲む街」の世界観は圧倒的。すり鉢状の街で暮らす人々の話なのですが、人物の熱狂とか寂しさが伝わってきて、自分も住人の一人になったような感覚になるんです。最終的に街は崩壊してしまうんですけど、本を閉じて現実に戻ったあとも、すぐにその街に引き戻されるような、虚構とは思えない世界を生み出す作家さんだと思います。
私はもう一回読みたいページに付箋を付けながら本を読むんですが、この本にはびっしり付いています。巻末に山尾さんご自身による作品解説があるんですけど、そこに「想像力の器械体操をしているみたい」と書かれていて。たぶん、想像力がぐるぐる回ったりしながら書いている感覚なんでしょうね。
それに対して、私の自意識からくる恥ずかしさで「隠したい」のは『ぼくのともだち』。エマニュエル・ボーヴというフランスの小説家の作品です。まるでコントのようで、思わず笑ってしまうところがいっぱいあります。