親と子が共有名義で不動産を保有している場合は、相続に備えて「子の持ち分」を親に購入してもらうのも手。前出のように、現金と比較して不動産の評価額は大幅に下がるためだ。
「あとは現金に余裕があるようなら、納税資金対策として上場株式に替えておくという方法も。有価証券は物納ができるうえに、相続発生日や3カ月前までの平均株価など四つの評価額のなかから最も低い価額を選択することが可能。相続発生から申告までに10カ月の間があるので、申告前に株価が急騰すれば売却して現金納付することもできます」(同)
なお、富裕層の間では10年近く前から借り入れで高額な高層マンションを購入して、相続税をゼロにするような“タワマン節税”がはやったが、近年、国税の締め付けが厳しくなっているので要注意。
「タワマンは各戸の土地の持ち分が小さくなるため、時価に比べて相続税評価額は大幅に下がり、その購入資金の大半を借り入れで賄った場合には、相続税をゼロにすることも可能。しかし、この仕組みを利用した行き過ぎた節税に対して、国税が疑義を唱え、今年だけでも2件の大きな高裁判決が下されています。特に、亡くなる直前に銀行から『相続対策』を目的とした融資を受けている場合は注意が必要。国税は融資の稟議書まで調べます。億単位の相続税が課せられる処分が判決で維持され、国側が勝訴しているのです」(同)
不動産を利用した相続・贈与税対策は有効だというが、多額の借金を作っての相続対策は避けたい。
(ジャーナリスト・田茂井治)
※週刊朝日 2021年11月12日号より抜粋